紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所
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  有機農業の特色(3) 有機農産物を作るメリットと意義

 有機農業の特色(1)では、有機農業を実践するのはなかなか難しく、制約条件も多いことを挙げた。
 それでは、たいへんで難しい有機農業になぜ取り組む農家があるのだろうか。その理由を挙げてみると、
 
@有機農産物の生産はたいへんで難しく、稀少価値があることから、有利に販売できる面がある。

A農産物をブランド化すれば通常のものよりも高く売れる。しかし、生産される農産物に何も特徴のない地域が多い。このような中で、有機農産物としてブランド化することは、知識と経験、努力によって可能であり、ある程度、生産物を揃えることができればやりやすい面もある。具体的には、栽培方法が有機の「生産基準」をクリアできれば、「有機JASマーク」という有名ブランドを示すマークを使うことが出来る。

B有機農産物の生産には堆肥が十分に使用され、植物体が丈夫に育てられ、一般においしいという評価が高い。

C農家が自分で農協や市場を通さずに直接消費者に売る場合がほとんどであり、直ぐに現金収入が得られる、消費者の評価が分かる、一般の農作物よりも高く売れる、直接販売なので手取り分が多くなるなどの楽しみがある。

D農薬による健康被害を被った農家や新規農業参入者などは、無農薬での栽培を志向する場合がある。

E最近における輸入野菜の農薬汚染などから、安全・安心を求める消費者が増えてきたことに応える。

F化学物質過敏症の方が無農薬農産物を必要としたり、乳幼児に無農薬の農作物を食べさせたいという母親がいるなど、割合は低いが、有機農産物を是非とも必要とする消費者がいる。(参考文献

Gがん患者が、がんを小さくするための抗がん剤治療や放射線治療と合わせて、がんに対する自己免疫を強化するための食事療法を行う場合に、通常よりもかなり多くの生鮮野菜や果物のジュースを摂る場合があるが、その場合に、有機野菜や果物を摂ることが推奨されている(例えば、済陽高穂著「がん再発を防ぐ完全食」)。

H有機農業は一般的に、慣行栽培よりも環境に負荷を与えないことから、環境配慮志向を持つ農家や消費者が有機農業を望んでいる。


I欧米では、[地域のコミュニティーに支持される農業」(CSA: Community Supported Agriculture)が盛んである。CSAでは、地域住民が地域の農業環境の保全に貢献する農場や、地域住民の必要とする有機農産物を供給する農場を住民が参加しながらサポートしている。この活動では、有機農産物が重要なキーとなっている。

Jイタリアなどでは、スローシティー、小さな美しい村運動等をベースとするアグリツーリズモが盛んであるが、その土地で収穫される食材を用いた郷土料理が1つの目玉となっている。この場合に、有機農産物を使う場合も多く、地産地消の有機農産物がアグリツーリズモ等を通じた地域活性化に貢献している。

K最近、欧米等から有機の農産物や加工食品の輸入が増加しており、国内市場での国産有機農産物のシェア確保が求められている。      

 以上のように、有機農産物を生産することは、農家、消費者、環境面にメリットがあるので、環境保全型農業や特別栽培農作物の生産とともに、これからも取り組む生産者が増えていくだろう。

                                            
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